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グラスの向こうに見えるありふれた日常は、はたして現実なのか虚妄なのか。
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良く行っていたホテルのバーのカウンター。
僕が座る左端から2番目の席のちょうど反対側、右端から2番目の席に
いつも座ってカンパリソーダを飲んでいる女がいた。



出勤前のホステス風なんだけど、時間は既に8時半。あまり着飾ってもいない。
バーテンに聞くと、近くのクラブのママさんだという。

カンパリソーダが実に良く似会う女だった。

タンブラーに氷を入れ、カンパリを注ぎ冷やしたソーダを満たして
軽くステアするだけのカクテルだ。胃薬のほうがうまいという人も居る。



さほど飾り気の無い割に、その独特の味わいは好きになると
これほど美味しいものも少ないのである。

カンパリソーダが似会う女も、やはり最初はとっつきにくかった。
だが、そのよさが解り始めると、夢中になってしまう。
そんな女だった。
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サンディエゴのラ・ホーヤに近い海岸線に位置する小さな店で
テキーラ・サンライズばかり飲んでいた。



海の見えるその店で、サボテンが点在するだけの荒れ果てた平原を
赤く照らして昇ってくる太陽をイメージした名前をもつ
カクテルを飲むギャップをひとり楽しんでいた。

テキーラの故郷メキシコのすぐ近くって言うことも面白かった。



氷を入れたグラスにテキーラとオレンジジュースを注ぎ軽くステア。
グレナデン・シロップを静かに沈めるだけのカクテルだけど、

グレナデン・シロップを沈めた瞬間、朝焼けを想わせる
美しい色があらわれる。

カリフォルニアの夏の夜に似会う一杯だ。
重厚な厚みのある木のドアを開けると、心地よい音楽が僕を迎えてくれます。
なじみのその店は、日常を少し斜めから見ることのできる稀有の場所でした。



彼女と出会い、意気投合したのもこの場所でした。

カウンターのいつもの場所に座ると、いつものようにカットトマトと、レモン、
ABSOLUTのPEPPAR 、グラスと氷が出てきます。
氷を入れたグラスにウォッカを注ぎ、トマトにレモンを絞って口に放り込み
2.3回咀嚼してからグラスのウォッカを流し込みます。
おいしいブラッディ・メアリーです。
ただ、ウォッカに唐辛子が入っててすごく辛いブラッディ・メアリーですが
結構気に入っています。



せっかく、日常を少し外れたところにいるわけですから、
コレくらいの飲み方が普通なのでしょう。

一つ離れた席にいた彼女はその飲み方が気になったのでしょう、
声をかけてきました。
簡単な説明をして、一杯ご馳走してから、
彼女が僕の隣りに移動してグラスを傾けるまでそれほどの時間を要しませんでした。

それから、その店は僕達のデートの待ち合わせ場所となってしまいました。
それ以来その店では、日常を少し斜めから見ることが出来なくなってしまったのです。
そしてそれは、彼女も同様だったようです。

僕達は毎夜のように、日常と非日常の間でデートを重ねました。
と言うより、デートの最中は常に非日常でした。
お互いのニックネーム以外の名前や住んでいる所など何も知らないのです。
そのことが、逆に一緒にいる時間をより濃いものにしたのでしょう。

一年ほどが過ぎた時、彼女は日常に戻っていきました。
もちろん、その理由も行き先も聞いていません。
彼女に貰ったプレゼントだけが、彼女の存在を示しているようです。

今、思い出しても、グラスのむこうは霧のかかったように霞んでいます。



僕はまた、日常を少し斜めから見ることのできる場所を探して歩いています。
いつもの店のいつものカウンター。
いつもの酒をいつもの女と飲んでいる。

この風景に飽きる事はない。
ひとつの儀式のようなものなんだから。



この儀式と共に僕は虚構の中をさまよい歩くことになる。
誰もが親しげに近づいてくる話し掛けてくる。
女も男も。

彼女達が僕に求めているものも彼らの目的も僕は知らない。
いや僕自身がこうしていることの目的自体僕にはわからない。

ただこのカウンターに座っていると心地いい。
現実に背を向けるでなくかといって直視するでもない。
その曖昧さの中でいつもの女が微笑んでいる。

僕の酒はこうして始まる。
暑い日が続く。もう少し我慢するしかないだろう。

そんな暑い夏は、やっぱりテキーラ!
テキーラはちょっと、なじみがないし強いからって人には、
フローズン・マルガリータをおすすめする。



テキーラと相性のいいライム・ジュースを使い、
オレンジのリキュール"キュラソー"でフレーバーをつけたカクテルだけど、
シャーベット状になっているから、
ストレートな「マルガリータ」ではちょっと強いという人も楽しめる。

フローズンでもスノー・スタイルになっているから、
ときどき塩をなめながら飲むと、テキーラの味わいが引き立つ。
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